自己破産は借金地獄に陥った人の救済制度
「自己破産」という言葉が一般の人に知られるようになったのは、昭和50年代に破産が急増した「第一次パニック」といわれた時代からである。
そして、現在の「第二次パニック」の時代を迎え、すっかり「自己破産」という言葉は大衆化した感がある。
自己破産制度を簡単にいえば、裁判所が主宰して債務者(金銭債権では借主)の財産を債権者(貸主)全員に公平に分配し、
債権者(金銭債権では貸主)の公平な満足を確保すると同時に、破産した債務者の債務を整理し、債務者に生活再建と再出発のチャンスを与える制度である。
こう言えば何だか難しそうに思えるが、要するに借金の返済が不可能な債務者から財産のすべて(生活に最低限必要なものは別)を出させ、これを債権者に分配し、残った借金を免除するというものである。
破産には、昨今のバブル後遺症にみられるような「法人の破産」と「自然人の破産」とがあり、法人の破産とは会社の破産であり、自然人の破産とは個人破産(消費者破産と呼ばれる)である。
また、自己破産とは、裁判所に対して債務者自身が破産の申立てをする場合をいう。
自己破産の申立てで、もっとも注意しなければならないのは、破産の申立てをして破産宣告がなされたからといって、借金は免除されないという点だ。
借金を免除してもらうためには、破産宣告が確定した後に、裁判所に対して免責の申立てを別途行なう必要がある。
これが免責制度と呼ばれるもので、この手続きを忘れると、破産者になった状態で借金は残ることになり、サラ金業者からの取立ても続くことになる。
このように債務者が借金から解放されるためには、破産の申立て、免責の申立てという二段階を踏むことになるが、これには理由がある。
現行破産法は、1922年にドイツ破産法をモデルに制定されたが、事業者破産を念頭に置いたもので、破産法には免責制度は採用されていなかった。
英米法をモデルに免責制度が導入されたのは、戦後の1952年のことである。
そのために、破産手続きと免責手続きは別々に行なわなければならず、破産宣告がなされた段階で破産手続きが終了し、
借金地獄から解放されたと一部の人に誤解を招く結果ともなっている。
破産・免責制度は、破産者を債務の重荷から解放し、再出発の機会を与えようというもので、
これは個人の尊重・生命・自由・幸福追求権を定めている憲法13条や国民の生存権、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を定めている憲法25条の精神にも合致し、基本的人権の制度的保障のひとつと位置づけることができる。
話は少々難しくなったが、今日、年間約6万人の人が自己破産し、その多くは再起していることを考えると、破産・免責制度が消費者、多重債務者にとっていかに重要な制度かがわかる。
これは、多重債務で苦しんだ末に自己破産を体験したある人の感想である。
「わたしがもし、あのまま自己破産の申立てをしないで、逃亡生活を続けていれば、いまごろ、どうなっていたかわからない。
きっと、まともな就職をすることもできなかっただろう。
そして、おそらく債権者の厳しい取立てから逃げ続け、人生の敗北者のように生きていたことだろう。
いま思えば、たかが借金のために妻や子供にまで迷惑をかけることはない。
まして、借金を返すために犯罪をおかして、一度しかない自分の人生を棒に振ってしまうことはない。
免責決定されたいま、わたしは借金地獄から解放され、これからの人生を希望をもってやり直しているところだ」
自己破産制度が彼を救ったのである。
自己破産をした多くの人は、彼のようにこれまでの生活を建て直し、普通の暮らしを営んでいる。
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